画面の向こうの、

観終わったときに書くところ。ネタバレがあったりします。

「不能犯」

すごい!きれいな白石監督だ…
こんな風にも撮れるなんて。
貞子vs伽耶子のときは所詮白石節だったから、斬新に感じる

無駄なシーンがなくて、全部の会話に意味があり、
ヴィジュアルセンスが抜群に良い
どのシーンも立ち位置やら見せ方がすごくかっこいい
で、それに見合う、映える、かっこいい俳優さんたち

多分それらヴィジュアル面のおかげで、
現実的な世界観の中のファンタジーな物語の表現に成功している
漫画的なかっこよさを全面に持ってきているけど、
どの登場人物も服装とか髪型とかに違和感がなく、リアルで
そのバランスがすごく絶妙で。

演技も、基本的に静かなんだよね
怒りや狂気をはっきり描いてるんだけど、漫画的過ぎない

ただこれねー、多分、原作があんまりおもしろくない…
漫画の1巻が家に転がってて読んだけど、つまんないんだもん…
なんとなく盛り上がりに欠けるというか…

どうでもいいけど不能犯役のひと、
見た目に反して低い声で不思議だった。
思いっきり意識して低く出してるんだろうか
声優さんの、アニメのキャラのような感じがした
これもまた全体のバランスの絶妙さにスパイス。

完全に良い意味で白石監督っぽく無く、
ちゃんと一般人がみても大丈夫なようになっていて本当驚き

でもね、多分ね、あそこの唯一無駄なDVシーンは
きっと意図して殺人ワークショップのオマージュよね。笑
あぁほんとに白石監督だ!ってそこで思ったの。笑
こういうところ、ほんとうに好きです。

こっちと違って、予告編だけでも楽しみになっていた
白石監督の地獄少女、より楽しみになっちゃったぁ

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3.5/5.0
監督:白石晃士
2018年の日本映画

「アリス・イン・ワンダーランド」

これも、ひとつのアリス。
そういう意味では大好きだけども、
おもしろくない…

ティムバートン監督映画って、
いつも話が淡々としている
きれいすぎるというか、易すぎるというか
美術センス、彼のアリス、それはやっぱり素敵だし
映像も当然以上に複雑な非現実なんだけど

アリスの赤いくしゃっとしたドレスが好き。

あぁティムバートン監督映画の点数、いつもコレ
でもね、アリスの物語なんて、
これくらい何もなくて良いとも思うの

私もお茶会のテーブルの上を歩きたいわ

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3.0/5.0
監督:ティム・バートン
2010年のディズニー映画

「バーレスク」

太っているというコンプレックスを持つ人が
バーレスクと出会い、自分を好きになっていく、成功物語
かと思ったら、そんな一筋縄では無い。

たしかに、TVに出てバーレスクを笑顔で演じられたけど
(TVに出る、ことそのものだけでは無い)
彼氏と思ってた人には遊ばれてただけだったし
教師はクビになって地域一帯に雇われなさそうだし
何より親との関係は溝が深まったんじゃなかろうか。
だって母親はバーレスクを見ずTVを消してしまった。
娘の心の否定。
まぁ、娘のバーレスクを見たいか?と言われると、
それはそれで一般的においても微妙だろうけど…

この映画の表のテーマがコンプレックスなら
裏のテーマは親子関係なんだと思う。いわゆる毒親

主人公ベティーが言う
「私にいま必要なのは自尊心を養うことよ
 (母親に対して)あなたと一緒に居てはできない」(うろ覚え)
素晴らしい台詞だと思う。

一方、
ティーと同じく身体にコンプレックスのあるスティーブン
父親が権力者なのか、何かあると言いつける癖があるみたい
だけど、ベティーに少しずつ心を開いていく
そしてTV出演もきっちと最後まで見て、受け入れられる
それを隣でみていた父親は、「酷い」と一蹴
父親はベティーを避難しているつもりだろうけど、
その言葉はスティーブンのコンプレックスを増幅させるものなのに。

どちらの親子もまだまだ問題がありそう。

そしてもう一つ取り上げたいのは、ロッタ
細く、顔もかわいく、歌もダンスも出来る。
そしてオーディション(というか決まってたようだけど)に選ばれるも
「私は豚のようなお腹」ということを言い、泣きながら腹筋。

やはり太っているなんて易しいテーマではなくて、
自尊心、それを育てる親の役目。世間の価値観、とか
深くて冷たくて重いものをテーマにしている気がする。

もちろんサクッとみれるし、
一般的には重い気持ちにはならないけど、
私なんかは暗く暗く考えてしまう。笑

世間の、親のつまらない価値観に囚われる人が
どうか少しでも減りますように。

この映画、情報が無さすぎて、
監督のお名前すら読めないわ…
いつも頼りのFilmarksにすら無い!

原題訳:牛が飛ぶとき
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3.7/5.0
監督:Tereza Kopáčová
2019年のチェコ映画(不確か)