画面の向こうの、

観終わったときに書くところ。ネタバレがあったりします。

「かぐや姫の物語」

つち、くさ、むし、とり、けもの、
めぐる、まわる、いきるということ

ジブリはこの「生」というテーマをよく扱うけど
これがひとつの頂点なのではないだろうか

現代は、便利だけど無機質なものに溢れかえっていて
そのすべてが当たり前ではないということ、
この映画の土や草のにおいが
もう届かない人すら多いのかもしれない。
私はそれが恐ろしい。
天の衣を纏ってしまったわけではない筈なのに。

だからと言って、私自身、この、便利性を手放せもせず、
では何が出来るのか?と問われれば
ただ感謝していただくことしか。

でもそれで良いのだと思う。


日本の四季の美しい色が淡くはっきり描かれていて
かぐや姫の眼に映っている色なんだろうなあと思う
走って逃げるシーンの黒々とした木々、
庭を偽りだと悲しむシーンも黒っぽい。
そう思うと宮中は本当はもっと煌びやかなのかもしれない。

昔々の物語を、うまく現代的要素も取り入れていて
主要キャラ達は少しポップなキャラ付けで、
台詞も今風、見やすく、聞きやすい
でもお歯黒やら名付けやら、きちんと押さえるとこは押さえ
長めの映画なのに集中力途切れずみられた

お金目当ての、ただキャラクターが出るアニメじゃなくて
こういう映画を、きちんと
世界に、日本人こそに、知ってほしい
_________________

5.0/5.0
監督:高畑勲
2013年の日本映画

「ヘレディタリー/継承」

タイトル通りの話、オチ。
そういう意味では読めすぎてまう…
けど、このタイトルだからこその、
「誰に?」「誰が?」という感覚も有り。
娘ちゃんが主かと思ったらすぐに違った…笑
関係無かったのは血の繋がってないお父さんだけだったのかな

日本ホラーの、ずーっと陰鬱とした感じに
海外特有のヒステリックさを持たせた感じ
お母さんの演技がとにかくすごくて
前半は殆ど、ホラー的な怖さではなくて、
母の狂気と陰鬱さって感じ
後半になるにつれ、望んでいるホラー感が増してきて、
ようやくちょっと楽しくなってくる、と思ったら終わり…

ちょっと助長に感じない…?
怖い人には怖いかもしれないけど…
邪教ものなら邪教もので、そっちメインの方が好きかな…
この続編が見たい。
あぁこの感情は「ラストエクソシズム」的。
もっとおばあちゃんとのほのぼのシーンとかみたい…

でもエクソシズムとか出てこないし、
悪魔とか霊とかの、知ってる人しかわからない話じゃ無いから
そういう意味ではホラーに馴染みが無い人にも見やすいのかも。

誰でもすぐに発生させられる、
馴染みのある音を恐怖に使っているのは意地が悪くて好き。笑
_________________

3.5/5.0
監督:アリ・アスター
2018年のアメリカ映画

「女王陛下のお気に入り」

私ってもしかしてドロドロ劇好きじゃない?
いやそんなこと無いと思うんだけど…
少し助長に感じた。

いちおう史実の人物が出てきて、
政治的な話も出てくるけど
別に関係ない、フィクション
そして女同士の戦い
日本の映画やドラマの「大奥」のよう。

とにかくきれい。
無言の、表情で魅せる演技、
それに耐えうる演技力と美貌、或いは醜さ
優雅な音楽が広がりと余裕を感じる。
映画そのものの余裕、というか。

終始衣装のレースに拘りを感じる
きっと制作陣のなかにレースフェチが居たんだわ…
ただ、べつに当時のレースを使っているわけではなく、
衣装のデザインと共に現代的。
台詞の感じも現代的。Fとか言いまくり。

なんかなぁ…もう一悶着欲しいような…
結構あっさりと逆転し、そのまま勝った
でもそれはあくまで女王の僕なだけで
それ以上のし上がれないし、全てを手にした虚しさ。
一方、女王はただ愛が欲しいだけなのに、
利用され、もはや冷たくされ、
それでも、だからこそ、性という愛の欲に勝てない。

兎は性欲の象徴。
踏み潰して勝ったつもりになっていても
女王には勝てない、逆らえない。

人間勝ち負けだけでは何も満たされない、という話かな
そう考えれば、国外追放になった側の方が、
本当の幸せをいつか掴めるのかもしれない。

_________________

3.4/5.0
監督:ヨルゴス・ランティモス
2018年のアイルランドアメリカ、イギリス映画