画面の向こうの、

観終わったときに書くところ。ネタバレがあったりします。

「クロノス」

ギレルモ・デル・トロの初長編監督作品

長めの語りで丁寧に語られる「クロノス」
錬金術師が残した永遠の命を与えるモノ、
というあの語りだけでなんてドキドキすること!

そしてそれを偶然手にしてしまう善良人、
それを追う金持ち老人と暴力要員の部下
という、良い意味で古典的な
わかりやすいストーリー

ゴシック絵本、という感じのいかにもなデル・トロ節。

冒頭も冒頭、始まって何秒かのあたり、
パンズラビリンスの妖精に変わる虫が出てきてる!
この頃からあれがデル・トロの世界に居たのね。

意図せずとはいえクロノスを使ってしまったせいで
じわりじわりと吸血鬼化していく様が恐ろしい
意図してないからこそ、知らないからこそ恐ろしいのかも。
脱皮のような皮を剥がした姿は、
すこしはみられるような姿なのか、
それとももっと恐ろしいモノに変わっていくのか…。

おじさん対おじさん、なシンプル構図だけど
それをぐっと引き締め、よりゴシックにしているのが孫娘
おかっぱぱっつん、妖艶、にっこり笑顔、そして喋らず、賢い
きっとどこかで「一言目」を使うんだろうな、
と思っていたけど、思っていても、やっぱり、効く…笑

最初から望んでなんかなかった、というのがあれど
「私はヘスス・グリスだ」と言いながら、
人間のままで死を迎えようとする美しさ、悲しさ。
そしてきちんと奥さんと最後の別れをする。
ひとりで死なずに。

このラストシーンに限っては、
音楽がより引き立てて本当に悲しい気持ちになったけど
全体的にちょっと音楽が五月蠅い…
無音のシーンというのが多分あんまりなくて
しかもこれシーンと合ってる?と思う曲が多かった…
曲自体がすごく悪いとかいうんじゃ多分無いんだけど。

現代人にはあまりにも話がシンプルすぎて
ちょっと助長感もあるけど
細やかな造形美、特殊メイクを使いこなすセンス
無駄の無い配役などなど、流石というしか無い。

デル・トロのゴシック以外のやつって
意外とみたことない気がする。みたいな。

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3.5/5.0
監督:ギレルモ・デル・トロ
1992年のメキシコ映画